1人で住宅ローンを借りようとしても、借入可能額が足りない場合があります。本当は4,000万円借りたいけど、3,000万円しか借りれない。そんな時に提案されるのが「ペアローン」や「収入合算」というワードです。どちらも借入可能額を増やす手段ですが、それぞれまったく違い性質を持っています。
収入合算とは?
収入合算とは、住宅ローンの申込者本人の年収に、配偶者や父母、子など近親者の年収を加えて、住宅ローンを借り入れる方法です。収入合算は「連帯保証」と「連帯債務」の2つのタイプに分けられます。


「連帯保証」は、あくまで返済が遅れた場合に近親者が肩代わりする形式だけど、「連帯債務」は、二人とも同等の返済義務があるんです。

え?!ほぼ一緒じゃん!結局二人で返済するってことでしょ?

パッと見はそうですね。ただ、住宅ローン控除は、債務がある人しか対象になりません。つまり連帯保証の保証人は控除対象ではありません。また、配偶者が亡くなった場合、「連帯保証」では、債務は残りますが、「連帯債務」では、持分に応じた返済額が免除されます(団体信用生命保険の加入が必要)。
連帯債務の収入合算は、主債務者1人のみ加入しか団体信用生命保険に加入できない場合と、夫婦連生と言いて2名で加入できる団体信用生命保険があります。もし連帯債務者が団信に加入できない場合は、いざという時のために、民間の生命保険に加入しておくことをお勧めします。
ペアローンとは?
ペアローンとは、夫婦がそれぞれローン契約を行い、融資を受けます。そのうえで、お互いに連帯保証人になる借入方法です。


住宅ローンを2つ組むことになるので、事務手数料や団体信用生命保険の保険料など2人分必要になってきますが、その反面、住宅ローン控除も2人とも対象になります。

なんだか、一蓮托生って感じね。お互いに借金するわけね。
もお互いに団体信用生命保険に加入するわけですから、もし夫婦のどちらかが亡くなっても、亡くなった方が契約していた住宅ローンは免除されます。ただし、もう一方の住宅ローンは残るのでよく考えて借りるべきしょう。
ペアローンと収入合算の違いを比較
収入合算は、住宅ローン契約者となる主債務者はあくまで1人です。対してペアローンは、2人で別々に住宅ローン契約するイメージです。
種類 | 連帯保証 | 連帯債務 | ペアローン |
---|---|---|---|
夫 | 主債務者 | 主債務者 | 主債務者 + 妻の連帯保証人 |
妻 | 連帯保証人 | 連帯債務者 | 主債務者 + 夫の連帯保証人 |
住宅ローン控除 | 主債務者のみ控除 | 夫も妻も控除される | 夫も妻も控除される |
団体信用生命保険 | 主債務者のみ加入可 | 原則、主債務者のみ加入可 (夫婦連生あり) | 夫も妻も加入可 |
ローン事務手数料 | 1回分 | 1回分 | 2回分 |
住宅ローン借り換え | 主債務者のみ審査 | 主債務者のみ審査 | 夫も妻も審査 |
画像でみやすく整えると次の図になります。

連帯債務やペアローンのメリット
メリットは、「借入額を増やすことができる」以外に、「住宅ローン控除を夫婦(連帯債務者)両方に適用できる」という点です。契約者が1人なら、減税対象者も1人で年間最大40万円までが控除されますが、契約者が2人なら2倍の年間最大80万が控除されるのです。ただ、厳密には借入残高の1%が控除対象なので、お互いに4,000万円で合計8,000万円以上の借入がある場合に限ります。

収入合算やペアローンはやめたほうが良い理由
一見、借入可能額が増えるのでメリットがあるように思えますが、当然デメリットもあります。収入合算やペアローンで配偶者の所得を当てにしていると次のようなリスクが出てきます。
配偶者が亡くなるリスク
配偶者が亡くなった場合を想像してみましょう。子育てや家事をしながら、今と同じ仕事ができるでしょうか。場合によっては家政婦を利用したり、残業を減らしたりする必要が出てきます。つまり、余計な出費や所得が減る可能性も視野に入れておく必要があります。
配偶者が退職するリスク
配偶者が妊娠・出産して子供が増えると、それだけ子育ての負荷もかかります。筆者も子育てをなめていました。幼いと月1回ぐらい発熱するため、保育園を休まざるを得ないケースがたびたび発生します。立場上、その度に休むわけにはいかず、パートタイムに切り替える奥さんもいます。
また、思いがけない病気を発症する可能性もあります。ペアローン契約者は団体信用生命保険に加入するため、死亡時は保証されますが、「頸椎ヘルニアでパソコン作業がしにくくなった」「痛風で営業先にいくのがしんどい」など、今と同じ収入や勤務形態を維持するは難しいケースが発生する可能性があるのです。もちろん1人の場合でもリスクはつきものですが、契約者が2人になれば、その発生確率は2倍になります。
離婚するリスク
当然なら、離婚のリスクもあります。自分一人でローン契約していれば、妻が出ていた後も住み続けることも可能です。しかし、ペアローンで妻に共有持分を設定した場合はそうもいきません。住んでない住宅のローンを払いたい人はいません。「すぐにでも売却してほしい」となるでしょう。急いで売却すると高値で売ることは難しく、購入金額よりも低い金額での売却になる可能性が高まります。
後悔したユーザーの声

夫と離婚したいのですが、一昨年にペアローンを組んで新築を建てたばかりです。私の方が収入があったことと、税金対策でペアローンを組んでしまったのですが、今となっては後悔の嵐です。

背伸びしてペアローンを組みましたが、コロナの影響で妻が雇止めに合いました。なんとか、妻の失業保険で返済できていますが、家計は火の車です。妻が無職になるリスクを考えていませんでした。
どんな時に収入合算やペアローンを利用するのか?
筆者が、ペアローンを利用して高額な物件を購入するカップルの声を聞いたところ、次のような回答をしていました。

タワーマンションの上層階は値下がりしにくいから、子供が小学校に入学するタイミングで売却して、いずれ戸建てに移り住む予定です。

この新築マンションは、街自体を再開発していて、いずれ値上がるから、少し無理してでも買っておいて、いずれ売却する予定です。
つまり、彼らは資産価値がある物件と分かったから、無理してでも買って、いずれ売るつもりでいるのです。特に売マンションで利用されている方が多くいましたが、これはマンションのほうが圧倒的に売却しやすいためと考えられます。
まとめ
収入合算やペアローンには、高いリスクが付きまといます。それを上回るメリットがないと利用するべきではないと筆者は考えます。「今ここで買っておけば、必ず価値が上がる」「郊外よりも都心のマンションのほうが値下がりしにくいから無理して買おう」など、将来を見据えたうえで利用するようにしてください。