会社での組織対立を改善!上司・部下・組織間のコミュニケーション方法

ビジネス書

『他者と働く「わかりあえなさ」から始める組織論』は、会社で働く場合のコミュニケーションについての書籍です。他部門や上司・部下と対立が発生する要因や対処法が記載されており、大変参考になります。また、本書籍には、ナラティヴ(narrative)という言葉が頻出します。直訳すると「物語」になるのですが、「解釈の枠組み」や「立場」という意味でとらえるとしっくりきます。

組織で゙働く困難性と課題

近年、組織のダイバーシティが進んでいます。また、プロパー社員だけでなく中途社員が増加することで、さまざま組織文化を持ち合わせた人々が同じチームで仕事をすることも増えてきました。

 そのような背景の中、異なる価値観、権力、コミットメントを持った人間が一緒に働き出せば、対立するのは必然です。私自身も前職ではピラミッド型組織にて長く勤務していたせいもあり、いつしか指揮命令系統に忠実に従うのが当然という価値観ができていました。そして、指揮系統外での対立についは、最初から「技術的問題」と捉えて論破することばかりに意識を取られていました。しかし、実際、正論だけでぶつかっても一向に前進しないケースもあり、解決策が見えないまま不快感だけが残る場面もあったことも事実です。今振り返ると、このような問題は、既存の方法で解決できない「適応課題」だったと言えます。

この種の「適応課題」には、次の4つのタイプがあり、一方的に解決することができない問題で、組織の「関係性」の中で生じる問題でした。

タイプ1 :【ギャップ型】価値観と実際の行動がズレている

例えば、女性の社会進出が必要と考えていても、男性中心の職場で機能してしまっているため、それを変えることがむずかしい。新規事業の必要性が分かっていても、既存事業からすれば冷ややかな目を向けてしまうことがある。

この対応方法は、双方にとって意味のある成果設定を作ることで新しい関係が築けることが多い。上記の例では、既存事業にとっても有益となる役割を新規事業に担ってもらうなどが考えられる。

タイプ2:【対立型】互いにコミットメントが異なる

例えば、営業部が契約を増やすため不備のある契約書を取ってきてしまい、法務部が契約チェックの負担が増加してしまうことがある。

この対応方法は、枠組みの違いを解消する。たとえば、一度、反対側のナラティヴ (解釈の枠組み)に来てもらい、眺めてもらうなどが考えられる。

タイプ3:【抑圧型】言ってしまうと厄介なことに巻き込まれ損をする

例えば、良い関係が気づけているため、関係性を維持するために馴れ合いになってしまう。リーダーが権力を振りかざし、現場が言いたいことを言えないことがある。

この対応方法は、今までの関係に別れを告げ、新たな関係を構築する。上に立つ人間が対話をし、両者にとっての正論を作っていくなどが考えられる。

タイプ4:【回避型】本質的な問題をすり替えたり、責任転換する

例えば、メンタル疾患を抱える人が現れたときに、ストレス耐性のトレーニングを実施してしまう。立場が上の人を悪者にするという「正義のナラティヴ」に陥っていることがある。

この課題は、フラットになり、お互いのナラティヴ を開示する場を設定することで改善する場合がある。

対話のプロセス

これらの適応課題に向き合うには、組織内の自分と他者との関係を見つめ直し、改める必要があります。他者との関係性には、必ず「ナラティヴ(解釈の枠組み)」が介在しており、対話によって適応課題と向き合うには、自分と相手のナラティヴに溝があることを見つけて「溝に橋を架けていく」ことが重要です。

具体的な対話のプロセスについては、次のように整理できます。

  1. 準備
    1. 自分のナラティヴを一度保留に、脇に置いてみる。
    2. 相手なりの事情や見えている景色を想像してみる。
  2. 観察
    1. 相手の大事なこと、困っていること、恐れていることを観察する。
    2. 発見したことを俯瞰して、マイナスの感情の発生理由を考える。
  3. 解釈
    1. 相手のナラティヴの中から自分を眺めてみる。
    2. 周りの協力者やリソースと連携しながら、橋を架けられるポイントを探り設計する。
  4. 介入
    1. 既存の知識を生かした技術的解決策を実行する。
    2. 結果を検証し、次の観察を行う。

これらをPDCAのように対話を繰り返していくことで、想定外のことが起これば起こるほど、強くなる反脆弱的な組織が実現可能と考えられます。

読んだ感想

成長の方向性は、知識や技能などの「スキル」と、能力・行動特性などの「コンピテンシー」に大別できます。目に見えやすいスキルの習得ばかりに偏りがちですが、コンピテンシーのほうが成果を出すためには不可欠と言われています。つまり、前述した「適応課題」に対処し、強固な関係性を築くことが集団で最大の成果を生む近道なのは言うまでもありません。

水平方向の人間関係

私の場合、組織における水平方向(左右)の人間関係は、対立型、いわばコミットメントの違いが原因のケースが多かったと考えられます。しかも、ナラティヴの一方的な押しつけをしたことで対立がおきてしまっていました。

 たとえば、営業部は、短期的な数字のプレッシャーを受けており、個人目標もあることから少しでも収益を伸ばす施策ができないか考えていることは想定できます。そのためクライアントからの要望をできるだけ呑みたいという想いが生じることも想像がつきます。ただ、要求や要望を精査せずに、そのまま丸投げすることで私が所属する部門に発生する工数コストについて、過去に対立したことがありました。「こちらも忙しいのに…」そんな想いがあって対立していたように思えます。しかしこれらをただ突き放すだけでは、対話とは言えません。

 つまり、お互いのナラティヴを理解して、同じ視野で話せる関係性をつくるために、弱みや苦労している点も積極的に共有し、関係部署を巻き込みながら互いの溝に橋をかけていく努力していくことが大切だということを再認識させられました。

垂直方向の人間関係

垂直方向(上下)の人間関係において、上司との間では、上が理解してくないという「正義のナラティヴ」に陥っているケースがありました。これは単に、上司に理解してもらえるように説明したり対話するのが手間だったことが、そのような想いを生じさせる原因だったのかもしれません。直属の上司が、どんな所に懸念を抱いていて、どんな視野で見ているのか、また、さらに上の上司からどんな指示が出されているのか、といった背景を知らずして、手軽に企画を通したいというナラティヴの一方的な押しつけをしていたことに他なりません。本書でも述べられていたようにイノベーションをすぐには起きません。少しの変化を積み上げて大きな変化に変貌させるために、手間を惜しまず上司が適正に判断できるための状況を作っていくべきだなと実感させられました。

 部下との間では、抑圧型の対立に陥っているケースがありました。意見がすれ違った場合に、部下のモチベーションを下げないために迎合したり、逆に立場を利用した意思決定をしてしまうことがあったと思います。ここで大切なのは、部下に背景や目的を何度でも理解するまで説明するということです。背景や目的を理解することで、部下が主体的に携われる仕事を作ることができます。また、自身の行っている仕事や状況を積極的に共有していくことで、部下とより強固な関係を構築することができると考えられます。

最後に

相手に相手のナラティヴを捨て去ることを求めるのではなく、相手を観察したうえで、相手がより良い実践ができるように支援をしてくことが大切」とあります。これはユーザー目線で仕事を実践していく上で必要不可欠な能力だと考えられます。つまり相手に憑依して、相手の目線でものごとを考えられる状態を指し示すことに他なりません。

 何かトラブルが発生した際に、自責思考と他責思考という考えがありますが、ここで対話による架け橋を作っていくには、自責でも他責でもなく、しっかりと「信念」を持ちながらも、客観的に物事をとらえ、自分も他者も両方が生きられる関係を構築できる思考を持つことなのではないかと思います。

この記事を書いた人

宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー

2007年から不動産業界や金融業界で働いてきました。その知識をもとに、世の中の人に業界の裏事情も公開していきたいと思います。

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