最近、「ユーザーファースト(顧客第一主義)」を掲げる企業が多くいます。大変良いことだと思う一方で、何がユーザーファーストなのかその本質を理解していない人が多いなと思いました。
お金を得るのはユーザーファーストではない?
ある人がこんなことを言っていました。

本当にユーザーファーストなら、このサービスは全部無料にすればいいのに。
確かに「すべて無料」なら顧客は喜びます。しかし、その場合、収益元を別で確保しなければ、サービスも維持できなくなり、いずれ企業は存続できなくなります。つまり、短期的にはユーザーファーストですが、中長期的にはサービスが消えてしまい、ユーザーファーストとは言えないのです。

ユーザーファーストって言うけど、本当にユーザーファーストなら広告なんて邪魔だから表示しなければいいのに。結局、お金儲けしたいんじゃないかしら。
「広告を無くしてしまえばいい」という考えはには2つの観点が抜け落ちています。1つ目は、無料でサービスを提供するための広告モデルだということです。もう1つは、一部のユーザーは広告を見て、「欲しい」と思うことがあるということです。例えば、過去にテレビCMを見てて「欲しい!」と思ったことはありませんか?つまり、適切なタイミングと適切な量の広告であれば、ユーザーにとって価値あるものにもなり得るのです。
本当のユーザーファーストとは?
ユーザーファーストとは、顧客第一主義という意味ですが、これは「ユーザーの言うことを何でも聞く」という意味ではありません。そもそも、自分の欲しているものを理解できているユーザーは、ごく一部です。「ワンピースが欲しい」と思って出かけて、なぜかワンピースじゃない洋服を買ってしまったなんてことはよく聞きます。
また、少数派の声ばかりを反映させて、大多数の人が不満を持つようになってしまってもユーザーファーストとは言えません。
既に欲しい物が明確な人
既に欲しい物が明確な人、いわゆる「顕在層」へのマーケティングについて考えてみましょう。例えば、「カメラが欲しい」「パソコンが欲しい」など既に何らかの目的を達成するために商品・サービスを購入しようとしている人達です。
この場合のユーザーファーストは、ユーザーが「どんな目的」を達成したいのかを明確にすることが重要です。昔、「ドリルを売るには穴を売れ」というビジネス書籍が流行りました。これは、「顧客はドリルを買いに来ているのではなく、穴を開けたいのが目的なんだ」という趣旨の内容でした。つまり、穴が開けられれば指でもいいわけです(普通は指が折れますが…w)
ユーザーにとっての真の価値やニーズを理解したうえで、商品やサービスを考えることがユーザーファーストにつながれるという、いわば「マーケットイン」の考え方です。マーケットインの事例は次のようなものがあります。
何が欲しいのか分かっていない人
次に何が欲しいのか分かっていない人、いわゆる「潜在層」へのマーケティングです。この人達は、CMや広告を見て「これ欲しい!」となるように、まだ欲しいものすら見えていない人達です。商品やサービスが見える形で視界に入ってきて、初めて欲するのです。
この層の人達には、気づきを与えることが必要になります。アプローチとしては、「プロダクトアウト」で商品開発を進めることになります。プロダクトアウトの事例は次の通りです。

自社サービスに広告やCMを挟むのも、潜在層に気づきを与える方法の1つです。つまり、適切な量なら、ユーザーファーストなのです。
最後に
ユーザーのことだけを考えた商品サービス、利益だけを追求した商品サービス、どちらか一方だけを考えて仕事をすることは誰にでもできます。しかし、経営陣は、商品サービスを長期的に継続してユーザーに提供していく必要があり、そのためにはユーザーファーストで商品サービスを作りつつ、存続できる程度の利益は生み出さなければなりません。そのバランスを考えるのがビジネスだと思います。